むち打ち症
いわゆるむち打ち症とは交通事故などによる追突、衝突などの衝撃で首が鞭のようにしなるために起こった首の外傷の局所症状の総称です。 |
最近は車にヘッドレストが標準装備されたことで“むち打ち症”と呼ばれることは激減しましたが、医学的な症病名と混同されて使用されることがあります。受傷原因や外傷の程度により症状はさまざまで治療方法や期間は様々です。交通事故時で当事者は興奮状態にあるので、痛みを感じる感覚が麻痺している場合もあります。数日経過して首の調子がおかしいな、急に肩が凝るなあ等でむち打ち症を疑い、ここで初めて病院に行き診断を受けても交通事故との因果関係が疑われることがあります。そうすると交通事故による損傷であることを示す診断証がないため人身事故として扱われずむち打ち症に対する損害賠償請求が出来なくなる可能性があります。交通事故にあってしまったらまずは自覚症状が無かったとしても必ず直後に病院に行き、医師による専門的診断を受けることが必要です。
このことから交通事故後にむち打ち症が疑われる場合は、神経学的所見を含む診察や症状によりレントゲン検査やMRIなどで精査することが大事ですので整形外科医の診察を受けることをお勧めします。
交通事故の他にもスポーツをしていてむち打ちになることもあります。ラグビーやアメフト、格闘技、サッカーなど後ろから思い切りぶつかられた衝撃により交通事故のように頚部を痛めてしまいます。スポーツの頚部外傷で一番多いのはこのむち打ち症です。
原因
受傷時に反射的に頸椎に対する損傷を避けるための筋緊張が生じ、衝撃の大きさによっては筋の部分断裂や靭帯に傷がついてしまいます。
交通事故によるむち打ち症の約7~8割は「頸椎捻挫」とされていて、頸部に衝撃を受けることで、首の筋肉や靭帯、関節包(関節を包む組織)が損傷してしまうのが「頸椎捻挫」です。また頸椎周りの筋肉を損傷した場合は「頸部挫傷」と診断されることもあります。
(要点)
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- 急激な加速や減速により、頸椎部が鞭のようにしなることで受傷します。
- 一般的に損傷が首の周りの軟部組織にとどまり、頸椎(骨)や脊髄・神経根(神経)の損傷を伴わない状態をいいます。
- 頸椎(首の骨)は7つの骨が積木のように重なり作られています。後屈するときには下部にある骨から順番に動いて上を向くことができます。交通事故など突然後ろから衝撃が加わると、上部の骨がいきなり動き頭と体が違う方向に強く動くため筋肉や靭帯などが損傷し頚部や肩などに痛みがでます。
症状
頸椎捻挫は手や足の捻挫、挫傷と同じで症状は首を動かすと痛みを感じたり、動かせる範囲が狭くなったりするものです。痛みは首の前後や側面、頭部、頸椎にわたり、凝りや張り感は首、肩上部、背中に出現し、上肢のだるさや痺れなどの症状が出ることもあります。
(要点)
- 受傷の翌日など時間が経過してから強い頸部痛や頭痛を自覚することが多い。
- さらに頸椎の可動域制限や上肢のしびれ感、後頭部痛、悪心、めまい、耳鳴り、目のかすみなど、いわゆるバレ・リュー症候群とよばれる症状がみられることもある。
- 病態は多様であるが、他覚所見は少ない。
〈一般的な症状の分類〉
- 頸椎捻挫型 … 頭痛・頚部痛・頸椎の運動制限など
- 頸神経根症型 … 痛み・痺れ・脱力など
- バレー・リュー症状型 … 頭痛・めまい・耳鳴りなど
- 脊髄症状型 … 歩行障害・四肢不全麻痺など
・椎間関節(椎骨と椎骨の間にある関節)からの痛みは関連痛として肩甲骨の周りに放散します。なので頚部の痛みに伴った肩の筋肉(僧帽筋上部)や、肩甲骨の内側にも痛みがでてしまいます。
診断
専門的診断が必要になりますので特に整形外科でのレントゲン検査、MRIなどによる骨折や脱臼が無いことの確認は必要です。 |
治療
受傷後しばらく(1~3ヶ月)は局所に痛みを感じますがこの期間に大事をとって過大に安静にする習慣が身についてしまったり、骨折や脱臼が無いのにも拘らず長期間頸椎カラーを装着していたりするといると痛みや凝り感が長引く原因になります。
骨折や脱臼がなければ、受傷後2~4週間の安静の後、頸椎を動かすことで痛みの長期化を予防することが大切です。安静期間は出来るだけ短くして、慢性期は安静や生活動作に制限をせず、ストレッチや筋肉をほぐすことを中心にすることが一番良い治療となります。
(要点)
- 症状と重症度により異なるが、消炎鎮痛剤、筋弛緩薬、抗不安薬などの処方や一時的な頸椎カラー装着などにより多くは短期に治癒する。
- 症状が遷延する場合、精神的ケアを含めた多面的治療が必要となる。
- むち打ち症の一部の原因病態はくも膜・硬膜損傷による低髄液圧症候群で、ブラッドパッチ療法(硬膜外自家注入)が有効であるとの見解がある。
日常生活でも頚部の動きに気を付ける必要があります。長時間のスマホ操作はしない・PC作業をするときはこまめにストレッチをするなど負担を掛けないことが慢性化しない為にも大切になります。
※※※この記事を書いた院※※※
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院長:青山昌弘